白い魔女

ネットでみつけたビアン小説

白い魔女
「それではよろしければ、ココに署名と捺印をしてください」
真弓は腕を伸ばし、『印』の字のあるところを指差した。
白衣から白く綺麗な腕が覗く。
スラリと伸びた細い指が、赤いボールペンに絡まっている。
当然のごとく爪は短く切られていた。
「はい」
ゆかりは『献体契約書』に署名し、持参した実印を押した。
「それと大概の物は部屋にそろってますが、必要な物があれば御堂に言ってください。
 それから一つ言い忘れましたが、現金を所持することは出来ません。
 何か購入したい物があるときは、全て御堂を通して購入してください」
「はい。わかりました」
その後ゆかりは借金返済に関する事や、ここでの生活についての詳細な説明を受けた。
時計の針は午後4時を回っていた。

その後ゆかりは特別室に案内された。
場所は院長室からエレベーターに向かって3つ目の部屋、廊下を仕切る2枚の自動ドアのすぐ横にある病室だった。
特別室と言っても、一般の病室よりも幾分広く、他の入院患者たちと顔を合わせないで済むと言ったこと以外、特別なことは無かった。
ゆかりは必要な物をメモに書き出し、御堂に渡した。


その日の夜。

消灯時間の9時30分を回ると、入院病棟の灯りが消され、窓から見えていた大銀杏が月に照らされ、黒いシルエットに変わった。
その姿はまるで巨大な魔王がそこに降臨したようだった。
薄暗い廊下を歩く一人のナースが、ゆかりの部屋の前で立ち止まった。
控えめなノックの音の後、静かに開けられたドアから御堂雪絵が姿を現した。
「まだ寝てないでしょ。ゆかりさん」
「ええ、何か?」
「今夜はあなたの献体初夜でしょ。一緒にいらっしゃい」
御堂はゆかりの腕を優しく取ると、ベッドから半身を起こすのを手伝った。
こんな時間から一体どこへ行こうというのか。
初夜という言葉に不安に駆られながらも御堂の後に従った。
浴衣姿のゆかりは部屋を出ると少し肌寒さを覚えた。
前を歩く御堂は2枚の自動ドアを抜け、昼間ゆかりが入った院長室の隣の部屋に入った。
誰もいないはずのその部屋は、すでにエアコンが効いて寒さを感じなかった。
部屋に入ると鍵を掛ける音が室内に響き、御堂が言った。
「ゆかりさん。今夜があたしとの初めての夜になるわね」
「えっ? あのう御堂さん、明かりを……」
戸惑うゆかりを余所に、御堂はゆかりの両肩を掴むとテーブルに押し倒した。
ゆかりより一回り大きい御堂がゆかりに覆い被さるようにのし掛かってくる。
浴衣の裾が大きく割れて、ゆかりの脚が太腿の付け根まであらわになった。
その脚を月明かりが青く照らしている。
御堂がゆかりの両手首を掴んだ。
「大人しくしなさい。あなたは献体なんだから」
御堂の顔が鼻が触れ合うほどに近づいた。


 13
ゆかりにのし掛かった御堂は、首をかしげるようにして唇を重ねた。
「これ以上手荒なことはさせないでゆかりさん」
突然の出来事にゆかりの首が思わず横を向く。
それは反射的な体の反応だった。
「嫌なの? そう、それなら」
御堂は横を向いたその首筋に吸血鬼のように吸い付いた。
紅い唇が割れると、ぬめった生温かい舌が延びた。
それは唾液の軌跡を残しながら、ゆかりのうなじを舐め上げていった。
「ああっ、みっ、御堂さん。やめて」
「何を? 何をやめるの?」
「こっ、こんな事。ちょっと待ってください」
「やめるなんてもったいない。んん? ほらっ」
舌先がゆかりの首筋をチロチロと擽る。
「ああぁん。だめ。やめて。御堂さん」
ゆかりの体にゾクゾクとした快感を生み出しながら、御堂の舌はネチネチとその首筋を這い降りていく。
御堂の体が移動するにつれ、浴衣が無数の皺を作りながらはだけ、白い柔らかな胸の谷間が露出してゆく。
「ああぁ、いや」
テーブルに押し倒されてもつま先は床に触れている。
その仰け反った状態のゆかりに御堂が体重を預けるようにしてのし掛かっている。
両手首を掴み自由を奪われたゆかりに為す術はなかった。
はだけた浴衣の下で、乳首が硬くシコっていた。
それを知ってか知らずか、御堂の舌は谷間の中央に差し掛かった。
「何でも言うことを聞くのが献体の契約よ。これ以上言うことを聞かないと契約違反よ。いいの?」
「そっ、それは……」
「なら、大人しくしなさい。言うことを聞く?」
「はい」
「そう、それじゃキスして。それが服従の証よ。さぁ、その可愛い唇を開いてちょうだい」
ゆかりは唇にわずかに隙間を作った。
御堂の目がゆかりの目を見つめている。
その目に従うように隙間が拡がってゆく。
「そうよ。良い子ね。あたしの舌を受け入れるのよ」
二人の唇が重なり、御堂の舌がその隙間から差し込まれるように延びた。
2枚の柔らかく生暖かい女の舌。
それは2匹の蛇のように絡み合ってゆく。
舌を絡ませながら御堂は、自分の中に溜まった唾液を意識的にゆかりの口に流し込んでゆく。
1分、2分。ゆかりの今まで経験したことのない程キスは長く続いた。
御堂の舌はゆかりの全てを味わい尽くすように、舌の届く範囲は全て舐め回してゆく。
御堂の手がゆかりの手首から離れ、掌をなぞりながら互いの指の隙間に指を入れ、そして固く結ばれた。
その時ゆかりは、自分の唾液と共に御堂の唾液を飲み下した。
御堂はゆかりの上から起きあがり、ゆかりを立たせた。
「隣の部屋に行きましょう」
ゆかりの手を取って、御堂は院長室の反対側の扉を開けた。


 14
その部屋は隣の部屋と比べると幾分狭く、室内にはセミシングルのベッドとクローゼット、そしてその隣に小さな机、その上には鏡が置かれている。
部屋の隅にはテレビが台の上に置かれ、ベッドに横になりながら見られるようになっていた。
この部屋は廊下側にドアは無い。
つまりこの部屋には隣の部屋からしか入ることが出来なかった。
それは廊下側にはバスルームがあり、そこには曇りガラスが嵌められた薄いドアがあった。
明かりを点けていないこの部屋に、蒼い月の光が音もなく忍び込んでいる。

この部屋も事務室と思っていたゆかりは思わぬ光景に目を丸くした。
「どう? 驚いた。ここわね、院長の仮眠室なの。仕事で遅くなった時なんかよく使っているのよ。
 出来るだけ家に帰るようにはしているみたいだけど」
「あっ、ええ……」
「さぁ、こっちにいらっしゃい」
御堂はゆかりをベッドの脇に誘うと、ベッドの中程に腰掛けた。
ゆかりはその正面に立っている。
「それを脱いで。下着もよ」
「えっ? はっ、はい」
ゆかりは浴衣の帯を解き、両肩から滑らせるようにすると両腕を抜いた。
その浴衣を2つ折りにすると御堂に渡した。
浴衣を受け取った御堂はそのままゆかりを見つめている。
「次は? 次はどうしたの? 早く脱ぎなさい」
戸惑っているゆかりに焦れたように言った。
ゆかりの指先が腰に掛かり、下着を下ろし始めた。
ゆかりの黒い茂みが姿を現し、御堂の目がソコに集中する。
全てを取り払ったゆかりの両手がソノ部分を隠す。
「手をどけて後に回しなさい」
「はい」
ゆかりは全裸のまま、まるで叱られている生徒のように俯いている。
御堂は頭から足下までゆかりの体を鑑賞した。
無駄な贅肉のない締まった体。
柔らかそうな大きな胸とその先端についたピンクの乳首。
脇腹から腰にかけての線は水泳で培った物だろうか。
太腿から足首か掛けて徐々に細くなってゆく脚線は、雪絵の好みのタイプだった。
股間を隠す黒い茂みはそれほど多くはなく、その奥に隠れたまだ見ぬ彼女の陰花は、さすがにこの位置からでは見えない。
「後ろを向いて」
ゆかりは言われるままに御堂に背を向けた。
白く陶器のようなその背中に、ウェーブの掛かったセミロングの黒髪が陰を作っている。
後ろから見ても美しい腰のラインはやや小振りなヒップへと恕リがり、思わず手を伸ばしたくなる太腿は、蒼い月明かりの中でも輝くようだった。
ギリシャ彫刻のようなゆかりの後ろ姿に、御堂の視線は釘付けになった。
御堂はそれを暫く鑑賞した後、音もなく立ち上がった。
後から近づき細い両肩を抱いた。
耳元に口を寄せうなじにキスをする。
淡くシャンプーの香りが鼻を擽る。
「あなたの体とっても綺麗よ。ゆかり」


 15
御堂はゆかりの肩に置いた手を、二の腕に滑らせながら一緒にベッドに座った。
掌に人肌の温もりが伝わる。
背中を丸め脚を閉じ、緊張した面持ちでゆかりは俯いている。
御堂は片手を背中から肩に回し、もう一方の手でゆかりの太腿の合わせ目を撫でた。
思った以上にスベスベと吸い付くような肌だった。
背中に回した手でゆかりを横になるように誘った。
ゆかりはゆっくりと倒れ込み、両脚をベッドに乗せ仰向けに横たわった。
御堂は1度立ち上がると、慣れた手つきで水色のナース服のボタンを外していった。
熟した女の柔らかな肉体が制服の下から徐々に現れ始めた。
制服をそのまま床に落としながら脱いでゆく。
御堂が下着姿になったとき、制服は足もとに山になって積み重なった。
御堂はゆかりの傍らに腰掛け、背中に手を回してブラを外した。
そして自分が上になろうとした時、ゆかりが羞恥心から両手で自分の胸を隠すように覆った。
「しょうがないわね。ゆかり」
御堂はゆかりの上になると、馬乗りになるように体勢を整えた。
そしてゆかりの両手首を掴むと胸元から引きはがし、万歳をするようにベッドの両隅に押さえつけた。
「あっ、いやっ、やめて」
「だめよ、悪い子はこうしないと。ほら大人しくしなさい」
そのまま御堂は馬乗りになった体をゆかりの胸近くまでずらし、
右手を離すと上体をゆかりの右腕にかぶせるように倒れ込み、
背中をゆかりの顔に向けるように捻った。
片手を伸ばしベッドの脇から手枷を掴みだすと、ゆかりの右手首に手枷を嵌めた。
「いやぁ、何?」
「ふふふっ」
御堂の上体で右手を押さえられたゆかりに対し、両手が使える御堂にとって手枷を嵌めることは容易なことだった。
手枷は黒い革製でベルトで閉めるようになっている。
その手枷から30センチほどの鎖が延び、もう一方のベッドの脚に嵌められた手枷に恕リがっている。
同じ物がベッドの4つの脚に取り付けられていた。
ゆかりの右手はベッドの隅に向けて伸ばされたまま、手枷でしっかりと固定された。
「ほら、こっちもよ」
片手の自由を奪われたゆかりの左手に手枷を嵌めるのは造作もないことだった。
「やめて、御堂さん。これを取って。お願い」
御堂がベッドの脇に降り、ゆかりの足を固定する足枷を取り出した。
鎖の奏でる小さな金属音がゆかりの耳にも届いた。
「さぁ、脚にも嵌(は)めましょうね」
「いやぁ、やめてぇ」
御堂はゆかりのその滑るような右脛に跨ると、素早く足枷を嵌めてしまった。
そして左足首にも黒い足枷が嵌められた。
両脚を約90度に開かれた状態で、ゆかりの四肢はベッドにX字形に固定された。
「どう? 鎖に繋がれた気分は。これでゆっくり楽しめるわね。ゆかり」
月明かりに照らされたその肢体は蒼白照り光り、生きた人形のようだった。


 16
「あなたは人一倍羞恥心が強いようね。そういう人好きよ」
「お願い。これを取って下さい」
「あなたの綺麗なこの体。月明かりなんかで見るんじゃもったいないわ。
 もっとよく見せて。ねっ、いいでしょ。第一こんなに暗くちゃカルテに何も書けないわ」
「えっ? カルテ?」
御堂は微笑みながら立ち上がると、ドアの脇にある照明スイッチの所へ行った。
この部屋の照明は仮眠室ということもあって、照度の調節がツマミを回すことで調節できた。
ツマミの回りにはOFFから始まり、1から10までの目盛りが刻まれており、最後はMAXと書いてある。
五百円玉よりもやや大きいツマミを回すと、部屋は夜明け前のようなほんのりとした明るさに包まれた。
御堂はツマミと回し続ける。
夜明けはやがて月光を掻き消し、徐々に日中の明るさに迫りつつあった。
「いやぁ、恥ずかしいわ。そんなに明るくしないでください」
「あら、もっと明るくなるのよ。ほら、こんなに」
ツマミはやがてMAXの表示に達した。それは直射日光を浴びているのと同程度の明るさになっていた。
もはやゆかりの体に陰を作るのは、黒い茂みに隠れた部分だけとなった。
「こうして明るくすると、白い肌が本当に綺麗ね。ゆかり」
御堂はベッドの脇に腰掛けるとゆかりの内太腿を片手で撫でた。柔らかな茂みに小指が触れる。
「ああっ」
「んん? 少し震えてるわよ」
手は太腿から膝、脛から足首そして太腿へと撫で回した。
「ツルツルでスベスベね。これから色々チェックさせてもらうわよ」
「えっ? チェック?」
「そう、チェック。性感チェックよ。どこをどうしたら一番感じるか。
 どんなことをしたら悶え、声を張り上げるか。
 全てカルテに記入させてもらうわよ」
「そんなっ、そんなことしなくても……」
献体にはいつもまず、このカルテを作成しているの」
「でっ、でも」
「怖い?」
「ええ」
「そうでしょうね。何をされるかわからないものね。
 でも心配しなく出大丈夫よ。体を傷つけるようなことはしないから」
御堂は机の引き出しから、バインダーに挟まれた数枚のカルテを取り出した。
「これからこれを全て埋めていくのよ」
御堂はゆかりにカルテを簡単に見せた。
そこには数十項目にわたるチェック欄や人体の略図などが書かれている。
「それじゃゆかりさん。始めますよ」
突然ナース口調になった御堂は、カルテを枕の横に置いた。
「最初は指と舌でチェックしていきますからね」