ルビーアイ Vol.002

◇山道にて

「ついて来るなって言ってるだろ!」
「姉さん、お願いしますよ。俺たちを弟子にしてください。お願いします。」

1人は馬の手綱を持ち、もう1人は荷車を一生懸命支えている。
というより下り坂のため、スピードがでないように支えている。
「おい、お前からもお願いしないか。」
チンピラ風の男とまだ十代半ばくらいの少年だ。
「あ、あのお願いします。ぜひ僕たちに稽古をつけてください。」
荷車を支えている少年が言う。
「ふん、なんで私がお前達のような盗賊風情に稽古をつけなければならない?」
ティナが心配そうにルビアンの左腕にしがみつく。
「お、俺達は盗賊じゃねぇ、修行者だ。自身の身体と精神と技を鍛えるために修行の旅をしているんだ。
 俺たちはあそこへ入団試験を受けにいってたんだ。
 で、あいつらだって本当は盗賊じゃねぇんだよ。
 サンジェルマン庸兵団っていってこのへんじゃぁ1・2を争う有名な傭兵団なんだ。
 そっれを1人でぶっ潰しちまうんだから、ぶったまげたぜ。」
「強い師匠に稽古をつけてもらえればそれだけ強くなれると聞きます。
 荷物運びでも、走り(ぱしり)でもなんでもしますから。お願いします。」
「姉さん達2人だけじゃ、目立ちすぎだぜ。俺たちがいたほうが目立たなくて都合がいいはずですぜ。
 それに、傭兵団の金庫開けて当面の資金を工面したのも俺たちじゃないですか。」
「だから、生かしておいてやってるだろ。」
ルビアンが振り向き槍をぐっと突き出す。
「わ・わわわ・・・」
「そ・それに、お・俺たちがいれば少しは金の工面だってできるし。
 なにもただで修行つけてくれなんて言わねぇ。
 姉さんたちが去ったあとも目ぼしいものがないか捜してたんだけど
 あるわあるわ、荷車にもどっさり。馬もよさそうなの2頭いただいてきたぜ。
 それに、こんなすんげー宝石も見つけたんだぜ。」
男が自慢気に見せつけた赤い石を、ルビアンがちらっと見て振り向きざまに手に取る。
自慢の宝石を一瞬にして取り上げられた男があわてて叫ぶ。
「お・おーっ、か・かえせ、かえしやがれ!それは俺んだ!!」
ギロッとルビアンが男をにらみつける。
「あゎゎゎゎ・・・、そ・それは俺たちに稽古をつけてくれるための、ほ・報酬ということで・」
男はひきつり笑いをしながら言った。
ルビアンが手にとった宝石を見つめてつぶやく。
「まがまがしき妖気がただよっているな・・・」
「それで足りなければ、もっと働いてお支払いしますから、お願いします。」
少年の誠実な一言。
「ふん・・・勝手にしろ。ただし私の命令は絶対だ、いいな?」
「へい。姉さん!ありがとうございます。」
「ありがとうございます、師匠!」
「いいか、私は弟子はとらん。私のことを師匠と呼ぶな。ルビアンでいい。」
「へい、姉さん。俺の名前は、ジェイド、こっちがサンです。よろしく願いします。」

「よろしくお願いします。師匠!」
「この娘はティナ。私の女だからちょっとでも手だしたら、即・死。いいね?」
「え、お・おんな?」
ジェイドが首をひねって聞き返す。
「しゃべりかけても、即・死。わかった?」
「へ・へい。」
「はい、わかりました。」
月明かりの山道を街道にむけて下っていく。

「そうと決まれば、一気に山を抜けようぜ。
 このあたりはまだランディス傭兵団の縄張りだ。
 幹部連中をつぶされて傭兵団としては壊滅だが、まだ残党がたくさんいるからな。
 用心にこしたことはねぇ。」