欠落したページ

ネットで見つけたビアン小説

■欠落したページ■

引きこもりの女には、母に言えない趣味があった。


 田沢麻琴は、23歳の家事手伝いである。
美しい顔立ちで一流商社に就職したが、すぐにセクハラの被害にあった。

 相手の上司を告訴できずに一方的に退職させられてしまった。

 それから、精神的に立ち直れないまま、引きこもってしまった。

  唯一趣味は読書だったが、男性恐怖症になっていたので、簡単な雑誌を読みたくなった。

  母の寝室にある書棚には、昔はなかったレデイスコミック類が増えていたので、
母が勤めに行っている間に見つけた官能小説を読んでいた。

  夢中で読んでいたレズビアン小説の途中ページが欠落していた。

 挟まれた栞には、「不良品につき、交換いたしますのでご来店ください」と手書きで書かれていた。
ストーリーは、良く理解できたので、差し込まれたしおりに書かれた本屋で立ち読みをすれば良いと考えた。

翌日、その本屋に立ち寄り目的の本を探したが見当たらなかったので、
レジカウンターにいた美しい女性店員に本に挟まっていた栞を見せた。

 「あの〜この本は交換してくれるのですか?」
「この本は絶版本で売り切れですね。返金は出来ませんので、
 店員に詳しい人がいるので連絡先を教えてもらえますか?」

「その方は女性ですか?男性だと困りますので」
「はい、女性ですので、もしかしたら同じ本を持っているかも知れませんよ」

 麻琴は、美しい店員のにこやかな対応に携帯番号を教えてしまった。

「メールアドレスを教えてくれたら、私は今夜も会いますから返信しておきますよ」
「あまり、夜遅くは困りますので、昼間に連絡ください」

 翌日、麻琴の携帯にメールが送信されてきた。
内容は、お取り寄せしなくても個人的に所有しているので貸します。という内
容だった。

 麻琴は、母に聞く事は出来ないので、母の勤務時間終了前に帰ってこれるよう
にすぐに書店に出かけた。

レジカウンターに立っている美しい女性店員の後ろにいた上品な中年女性は、
麻琴に視線を送りながら微笑んだ。


「今から、帰りますので自宅に来てください」

 麻琴は、すぐに済むと思っていたので車に乗ってしまった。

五分ほど車に同乗して女性の自宅マンションに案内された。

  女性の書斎には沢山の書籍が並んでいたので麻琴は気を取られていた。

「私は、この部屋に住んでいるけど良かったら遊びに来ない?」
「えっ!読みに来て良いのですか?」

「だって、あの本は、そういう本だから、同じ趣味じゃないの?」
「私は趣味じゃないですよ」

「嘘よ。同じ趣味でしょう?月に十万円でどう?」
「十万円なんて払えません」

「違うわよ。私が払うのよ。すぐに慣れるわよ」
「この部屋を貸してくれるのならガマンします」

「良かった。
ガマンしてくれるなら、合鍵を渡すけど他の人を入れたら全部なくなるよ」
「私は友達がいませんし、本を読みたいだけなので約束します」

「じゃあ、今夜のお金を渡すから、服を脱ぎなさい」
「ここで脱ぐのですか?」

「あっ、ごめんね。気が着かなくて、寝室に案内するわ」

 麻琴は憧れのレズビアンに愛されると思っただけで心臓が高鳴ってきた。

「うちの店員がね、貴女を欲しがっているのよ」
「奥さんがオーナーですか?私はあの方なら、お友達になりたいです」

「良かった。お友達になってね。私の趣味はね、可愛い女の子と暮らす事なのよ」
「うちの母も知っていますか?」

「お顔が似ているから、田沢さんの娘さんと知って誘ったのよ」
「お母さんの彼女も知っているの?」

「知ったら、会いたくなるから教えないよ。
今夜は帰らないとお母さんに伝えておくから、安心しなさい。
今日から私の事をママと呼ぶのよ、麻琴」
「はい、ママ」

 木梨道代は麻琴をレズビアンの道に誘い込んだのだ。

 麻琴が抱かれたいと思っていた理想の女性が道代だった。
 全てをさらして、大人の愛撫を身を硬くしながら受けていた。

   道代の肌の柔らかさと、密着したまま離れないテクニックに身も心も許していた。

夕方、道代は麻琴をベットに寝かせたまま部屋を出て行った。

   しばらくすると、違う女性が寝室に入ってきた。

「誰?」
「ワタシよ。ママの子供よ。名前は薫よ。今夜は子供同士、仲良くしようね」

 美しい女性店員は驚いて身を堅く閉ざした麻琴の唇を上手に舐めてきた。

麻琴は、うぅ〜っと、小さく喘いで耐えていたが、薫の上手な愛撫に次第に力が抜けて気持ち良い官能の世界に濡れてきた。

「力を抜いて、ママが麻琴を愛した様に、私も麻琴を愛してあげるよ」

小さく頷いた麻琴の顔に舌を這わせて瞳を開かせ舐めようとしたが、キツく閉ざしたまま拒否をした。

  麻琴が教わったレズビアンの快楽は、本で読む官能の世界を上回っていた。
 脱力感の中で思考を停止させていた。
  麻琴はママに処女を奪われ、ママの子供の薫にアナル処女を奪われた。

                                                                                                                                        • 麻琴は、木梨薫と気だるい朝を迎えた。

「麻琴、お母さんと会話しないそうね?」
「うん、私は引きこもりなんだ。お母さん、新しい恋人が出来たらしくて嫌なの」

「そうだよね。私もお母さんがレズビアンなんて想像も出来なかったよ」
「違うのよ。昨日、お母さんがレズビアンだって聞かされたから、許したけど、
 お母さんはダメな男に騙され続けて私を売ろうとしたのよ」

「でも、出来なかったんでしょう?」
「うん、出来なかったから離婚したのよ。きっと、ママに買われたんだよね」

「そうよ。やっと大人の事情が理解できたのね。麻琴はお母さんに売られたのよ」
「お母さんの気持ちはわかったけど、お母さんはママの女なの?」

「そうよ。私もお母さんに売られて来たのよ。でも、今は麻琴に会えて幸せよ」
「えっ!薫さんも売られたの?」

「このマンションはね。私の家なのよ。ママの家じゃないのよ。
だから、この部屋で麻琴に漫画か小説を書いて欲しいのよ」
「私が漫画か小説を書くの?それなら、読書が好きだから小説を書きます」

  それから、麻琴は、薫のマンションで暮らす事にして、料理や洗濯をしながら、暮らしていた。

   ある日、自宅に忘れ物をしたので昼過ぎに帰宅した。

麻琴の部屋には誰も入った形跡はなかったが、母の形跡もなかった。
母の衣服などは消えて、麻琴の部屋しか残されてはいなかった。

お母さんは、売られてしまったと考えて、薫のマンションに戻った。


「薫さん。今日ね、自宅に戻ったらお母さんが住んでいなかったのよ。
私も売られるのかな?」
「麻琴。驚かないで、お母さんはね。外国に行って整形しているのよ。
帰国したら、ママの愛人の女になるのよ」

 薫から聞いた事は、小説の様な異常な組織の話だった。

「安心しなさい。
麻琴が売れる小説を書いていれば、ずっと私の妹でいられるのよ」
「私は売れる小説なんて書く自信は無いから無理だよ」

「私の話や、麻琴の話を小説にしなさいよ。ママには内緒でね」
「ママに内緒なんて出来ないよ。
お母さんに迷惑かけたから、ママに認めてもらって小説を書くよ。
そしたら、お母さんに謝れるよね?」

「そうか、麻琴はお母さんに感謝しているね」
「居なくなって分ったのよ。親の大切さが」

「麻琴、お母さんと暮らした家を売るけど、麻琴の部屋の整理に行かなくても、
そっくりこの部屋に運んでくるけどいいかな?」

「お母さんが決めた事なら仕方ないです。引っ越しをお願いします」
「麻琴、大人になったわね」

麻琴は、薫のマンションで小説を書いていた。

それから、一年が過ぎて売れない商業小説を書いていた。

「麻琴、ママがね。小説を読んで感動したからご褒美をくれたよ」
薫が笑いながら麻琴に手紙を渡した。

内容は、街金悪徳業者に三万円を借りて法外な利息を一千万円請求された。
 恐喝され覚醒剤を打たれていた所をママに救われた。

 今はママの紹介で有名なレズビアンの女性の世話をしている。
元気だから心配しないでタメになる小説を書いてくださいと書かれていた。

 麻琴は、お母さんと二度と会えない様な気がして、涙が頬に伝っていた。

「今夜は独りで寝なさい。私も今夜は、一人で泣くからね」
「うん、お姉さん、ありがとう」
  

   麻琴には、弱みに付け込む悪人と、善人がいる事が理解できた。
  母が罠に落ちたのも、引きこもって母に負担をかけたせいだった。

   売れない小説を書ける幸せを涙の中でかみ締めていた。
    
終わり